Ikuta, R. and Hamada, S.(2022) The presynaptic active zone protein Bassoon as a marker for synapses between Type III cells and afferent nerve fibers in taste buds Chemical Senses 47, bjac016
味細胞は基本5味のうち1種類を受容し、味覚神経線維にシナプスを介して情報を伝達します。味覚神経線維の味刺激に対する応答を調べると、1本の味覚神経線維は主に1種類の基本味に反応しますので、味細胞は自分が受容する味に対応する味覚神経線維を選択してシナプスを形成していると考えられます。しかも、味細胞の寿命は長くても3週間程度で常に入れ替わっている一方で、味覚神経線維は入れ替わりませ。このため、味細胞はこの「選択的」なシナプス形成を生涯の間続けています。私達の研究室は、この味細胞と味覚神経線維の選択的なシナプス形成がどのようなしくみで行われているのかについて興味をもって研究を行っています。
シナプス形成を研究する際には、シナプスが形成されたかどうか調べる必要があります。私達は主に形態学的手法を用いて研究を行っているので、シナプスに局在するタンパク質(シナプスマーカー)に対する抗体を使った免疫染色という方法でシナプス部位を検出することをよく行います。味細胞はその構造からⅡ型細胞とⅢ型細胞に大別され、Ⅲ型細胞は神経細胞などと同様に味覚神経線維と化学シナプスを形成します。ところが、中枢神経系でシナプスマーカーとして使われる抗体(synapsin, synaptophysin, SNAP-25など)ではⅢ型細胞全体が染色されてしまい、シナプス部位を観察することができませんでした。私達の研究室の大学院生の生田さんは、中枢神経系のシナプスで使われるいろいろなシナプスマーカーを調べ、シナプス前足場タンパク質であるBassoonがⅢ型細胞のシナプスマーカーとして利用できることを見出しました。味蕾を研究する上で、Ⅲ型細胞のシナプス部を簡単に可視化できることは重要なことです。このため、生田さんの論文は論文推薦サイトFaculty Opinionsで取り上げられました(推薦者コロラド大学のトーマス?フィンガー先生)。https://facultyopinions.com/article/742215495